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一級建築士試験受験の方からこんな質問がありました。
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こんな質問でした。
建築基準法第12条の「定期報告」がややこしいというものです。
実は、自分も法令集を見てパッとわからなかったんです。
見落とすと法令集の中で迷子になってしまうので、今回はこの辺りを記事にして書いていきます。
覚えておくポイント
近年、定期報告は法改正がありました。
長崎のグループホームの火災等の火災事故によって多くの死者が出たのは記憶に残っています。
原因として、建築物が適法な状態で管理されていなかったことが問題となっていましたが、そういった背景もあり、平成28年に建築基準法第12条の定期報告も改正となりました。
今までは、特定行政庁がこういった建築物には定期報告をしてねっと言うことだったんですが、今後は痛ましい事故が起こらないように国も報告対象として定める建築物が出てきました。
この辺りを念頭において読み進めると読みやすいかもしれません。
まず、引くのは法第12条です
建築士基準法第12条の第1項をポイントを強調させながら載せてみますね。
第6章第1項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物[以下この項及び第3項において「国等の建築物」という。]を除く)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物(同号に掲げる建築物その他政令で定める建築物をいう。以下この条において同じ)で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物を除く。)の所有者は…(途中省略)…定期に…(途中省略)…調査を(途中省略)させて…その結果を特定行政庁に報告させなければならない。
これがいわゆる「定期報告」です。
では、これを分解しながら考えてみましょう!
第6章第1項第一号に掲げる建築物とは?
これは、確認済証がいるのかいらないのかを聞かれている条文ですね。
ここは、本当に短い条文なので、簡単に書くと…。
別表1の特殊建築物で、100㎡を超えている建築物
という事になり、ここでわかる情報はふたつです!
まずは、別表1の100㎡越えの特殊建築物が定期報告の対象となるかも知れないということ。
まずは大きなくくりでここを認識することが大切です。
逆に言い換えるとするならば…。
100㎡以下の別表1の特殊建築物は、対象外となるということ
はいっ!では、次をチェックしてみましょう!
政令で定めるもの(国)
大きなくくりの中でも、すごく重要な建築物は、「国」が報告対象として定めるからねっ♪と言いたいみたいです。
そして、もうひとり「これは定期報告してね」っと言ってる人がいます!
当該政令で定めるもの以外の特定建築物(特定行政庁指定)
ここで、ふたりの人格が出てきました(笑)。
「国」と「特定行政庁」です。
では、法第6条第1項第一号「100㎡越えの特健」を大きなくくりとして考えてもらっている状況ですが、さきほどのポイントでも書きましたが、あくまでも「対象となるかも」っと言うだけです。
この中から「定期報告の対象」となるものは、政令で絞られていきます
それが建築基準法施行令16条です!
これがまた読みにくいっ(困)。
建築基準法施行令第16条の内容は?
さ、いよいよ核となる部分が出てきますし、ややこしくなりそうなのでなるべくざっくりと記事を書いていきたいと思います。
施行令第16条第1項だけ書いてみます。
法第12条第1項の安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定める建築物は、次に掲げるもの(避難階以外の階を法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供しないことその他の理由により通常の火災時において避難上著しい支障が生ずるおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く)とする。
少しさきほどの法第12条の人格!?と色は合わせています。
政令で定める建築物は、次に掲げるもの(特定行政庁指定)
はいっ!ここに書いているものが特定行政庁指定のものですよ!っと言って終わりたいところですが、カッコ内に「国」の報告対象が告示第240号で定められています。
カッコ内をわかりやすく書きたいけど、否定っぽい単語が3つも出てきていてわかりにくいやんっ!
一応、ザクっと書いてみますと…。
国が報告対象として定めているのは、結局のところ平成28年告示第240号第1だという事!
(ちなみにオレンジ色の法令集ならP1399です。)
それ以外は、「特定行政庁が指定」したものが「定期報告の対象」となるということです。
施工令第16条第2項は特定行政庁指定です
こちらは、施工令第14条の2で建築物の用途と規模が書かれています。
ここには特定行政庁指定となる建築物が2種類定められています。
法第6条第1項第一号の建築物
パッとみると書いていないのですが、こちらの施工令第14条の2も、元々のスタートは、法第10条第1項から来ているものですから、そちらを見るとしっかりと条の頭に「特定行政庁は、第6条第1項第一号に掲げる建築物(以下省略)」と書かれているので、大きなくくりからのスタートとなっています。
そしてもうひとつが。
階数が5以上の延べ面積1000㎡超えの事務所など
こちらが対象となります。(特定行政庁指定ねっ。)
要は、このふたつのポイントは、保安上危険な建築物で勧告の対象となることも一緒に頭に入れておくといいと思います。
実際に問題を解いてみましょう!
一級建築士試験平成29年度からの出題です。
患者の収容施設がある地上3階、床面積300㎡の診療所(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く)の所有者等は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、定期に、一定の資格を有する者にその状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
「特に今までの記事の内容までしっかりと理解しなくても解ける問題だけど、実際は奥が深い問題だね。」
まとめ
- 100㎡以下の別表1の特殊建築物は、対象外になるということ
- 定期報告がいるかいらないかは「国」か「特定行政庁」が定める
- いるものについては、告示第240号が国の報告対象
- それ以外の施工令第16条1項は特定行政庁指定となる
- 式にしてみると、告示第240号-施工令第16条1項イコール特定行政庁指定建築物
- 特定行政庁指定建築物は他にも施工令第16条第2項もある
参考として、国土交通省のHPを載せておきますね。