目次
建築士試験における高さ制限のおはなしの続き
前回に引き続き、道路斜線の話しにもう少しお付き合いをくださいね。
別表3の記事も書いたし、2方向道路の話しもしたし…。
今回は、「セットバック(SB)」と言われている「後退距離について」。
どこに定められているかと言うと、建築基準法第56条第2項です。
建築基準法第56条第2項
2 前面道路の境界線から後退した建築物に対する前項第一号の規定の適用については、同号中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは、「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。)に相当する距離だけ外側の線」とする。
そうなんですっ!。道路から建築物を離して距離をあけてくれたら、道路斜線を検討する距離(L)にオマケしてあげるよというサービス条文なんです。
後退距離の検討方法
では、まず例題から
いくら高さを検討するA点の道路から離れている距離がbだとしてもあくまでも「最小」です。
あくまでもオマケなのであつかましくないよう控えめにオマケをいただきましょう。
↑距離の取り方はわかりましたか?
では、今までのことを踏まえて問題っ
平成28年度の一級建築士試験で出題された問題。
二級建築士を受験するからって、「一級建築士は難しいからやだぁ~!」なんて思わないで、ぜひチャレンジしてみてください。
…あとで一級建築士より難易度の高い二級建築士の問題もしますので(ニヤッ)。
では、チャレンジする問題はこれっ
図のように、敷地に建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平たんで、敷地、隣地及び道路の相互間に高低差はなく、門、塀等はないものとする。また、並びに日影による中高層の建築物の高さの制限及び天空率に関する規定は考慮しないものとする。なお、建築物は、全ての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。
解答までの手順(いつなる風!?)
解答までの手順
一応(!?)ちゃんとした解説を(ちゃんとできるか自信ないけど…。)
①2aかつ35で検討
2方向道路なので、イレギュラーな事なので、建築基準法第56条第6項から施行令131条からの緩和規定を見ていくと、施行令132条第1項に検討内容が書いてあり、今回はワンチャンの「中心から10mを超えた」を使わずに広い道路に変わることがわかりました。
ワンチャンって何を言ってるんだと思った方は、ここをクリックして読んでね。
どっちの道路の距離が厳しいか検討
サクラはパッとみて雰囲気で答えていましたが、実際には東側道路と南側道路の2か所が道路斜線がかかってきます。
ただ、問題に「建築物の高さの最高限度」と書いているので、実際にはしっかりと計算して「厳しい方」すなわち「計算した数字が小さくなる方」となります。
後退距離(スキマのオマケ)も考慮して距離(L)を出していくことになります。
後退距離の出し方がわからなかったらこの記事を最初からもう一度読んでみてね。
それでも???ってなったら…ごめんなさいっ…こちらの文章力の力不足です…。
- 東側道路の距離(L)=2+15+2+5=24m
- 南側道路の距離(L)=5+15+5+20=45m
なので、厳しい方は、東側道路なので距離は24mとなります。
③適用距離の検討
本当は、適用距離も検討します。容積率に関係するとサラっと書いただけなんで、わかりにくいかもです。
この説明まですると、話しがどんどんそれちゃうもんで今回は省略しちゃったんですが…。
今、わからんっ!ていう人は、飛ばしちゃって大丈夫です(本当に)。
でも、ちゃんと説明するって書いたから一応しておきます。
(参考)適用距離の計算
今回の問題は、「指定容積率」(問題に印刷されている容積率)は70/10。
「道路幅員による容積率」は、建築基準法第52条第2項により前面道路が12m未満であるために今回は適用されません。
したがって、別表3でチェックする「基準容積率」は、「指定容積率」の70/10となり、別表3(ろ)で70/10を該当項目を探し、(は)の適用距離をみると「30m」となります。
と言う訳で、東側道路の24mは適用距離内に入っているので道路斜線を検討する必要があり、南側道路の45mは適用距離外なので、検討する必要がない訳です。
はぁ~、自分でもややこしい書き方してるよなぁ~っと思いながら書いてしまった。
④各斜線の検討
建築基準法第56条では、「道路斜線(一号)」・「隣地斜線(二号)」・「北側斜線(三号)」の3つの斜線を検討するんですが…ちゃんと最後まで説明していないのに、今回は復習問題と言う事で、実際の一級建築士の問題をしてみました。
本当は、ちゃんと検討するんですがそれはまた後の記事でしっかりと。
まだまだこの高さ制限…お話ししなきゃいけないことがたくさんあるんです。
そして・・・なぁ~んだって最後は気が楽になるようにまでいきたいのですが、しっかりと理解しておく方が、一級建築士にとってはいざ捻った問題が出ても応用がつくし、二級建築士にとっては文章問題の対応がラクです。
何ごちゃごちゃ書いてんねんと自分で突っ込んでしまった…。
ちゃんと説明するって書いたから一応しておきます(笑)。
道路斜線の検討
商業地域なので、かける数字は「1.5」。
東側道路の距離(L)の24mに1.5をかけて36mとなります。
道路斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・36m
(参考)隣地斜線の検討
北側と西側が隣地斜線の検討方向になるねんけど…まあまあ敷地から建築物が空いているし、検討せんでもええかぁ~。
・・・て言うのが本音です(笑)。
でも、ちゃんと説明するって書いたしなぁ~。でも、キチンと記事で説明してないしなぁ~。
もぉ~ホンマごちゃごちゃ言ってないで、式だけでも書いておきますね。
ポイントはここでも「後退距離」、「スキマのオマケ」は使えます。
北側の隣地斜線検討の距離(L)=3+3+2=8m
西側の隣地斜線検討の距離(L)=3+3+15=21m
北側の隣地斜線検討の距離の方が厳しいので8mを採用。
(北側)隣地斜線=8m×2.5+31=51mとなります
隣地斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・51m
隣地斜線は、31mを始めから足してからのナナメ線のスタートなんで、それだけ高くなってからのスタートなんで、結構高くなっていくのが最初からわかっているんで、まぁ検討せんでもええかぁ~って気持ちになるんだけど…本当はちゃんと検討した方がいいので、引き続きの記事ではちゃんと書きますので、今は参考まで。
(参考)北側斜線の検討
こちらもまたちゃんと別記事にしますが、商業地域は北側斜線の該当する用途地域ではないんで「検討不要」となります。
北側斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・検討不要
(参考)検討結果
それぞれの斜線を検討した結果。
- 道路斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・36m
- 隣地斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・51m
- 北側斜線におけるA点の高さの最高限度は・・・検討不要
という事で、今回のA点の高さの最高限度は、「道路斜線の36m」となり、解答になります。
…なんか…パットすぐにサクラが答えを出してただけに…疲れました…。
まとめ
今回の一級建築士の問題は平成28年度に出題された問題で、実際は難易度が低い問題ではなかったんです。
自分なりの考察ですが、それまでイレギュラーな問題が多くて高さの限度の計算問題を諦めてた人が多いんだと思っています。
あのサクラでも解けたと思って(失礼っ笑)、気楽に考えてみてください。
そして、ひねっている問題は難しいと感じずに楽しいと感じてもらえるように、頑張って引き続き記事にしていきたいと思います。
おまけ(予告)
…次回はこの一級建築士の問題より難易度の高い二級建築士の問題もしましょうね(ニヤッ)。