法規

《いつなる風》建築士試験における高さ制限(塀編)

高さ制限5

まだまだ道路斜線の話しは続いていきます

前回に引き続き・・・と言うより、こんなにも記事が続いていくとは思っていたような思っていなかったような・・・。

イケないものに手を出してしまったのか・・・。

少しでもわかりやすくと思いながら、ゆっくり丁寧に書いているんですが、細かくあれもこれも書いているつもりはないんです。

勉強しながら、あれっ?て思ってその部分だけでも読んでもらえるようなそんな記事にしていこうと心がけていますので、引き続きお付き合いをよろしくお願いします。

今回は、前回の記事との関係が大きいので、読んでない方はまずそちらを読んでから。

《参考》前回の記事(SB編)はこちらをクリック

前回の記事の問題より

前回の記事でチャレンジしてもらった一級建築士の問題をもう一度見てみたいと思います。

今回はその問題文のポイントとなるところを赤字にしてみますね。

図のように、敷地に建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平たんで、敷地、隣地及び道路の相互間に高低差はなく、門、塀等はないものとする。また、並びに日影による中高層の建築物の高さの制限及び天空率に関する規定は考慮しないものとする。なお、建築物は、全ての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

サクラ
サクラ
門とか塀があるだけでなにか変わるの?
サク
サク
うん、それは高さの最高限度の数値が変わるかもなんだよ。

例題:平成23年度二級建築士の問題

先に平成23年度二級建築士の問題を。

図のような敷地(補強コンクリートブロック造、高さ1.4mで、透かしのない塀が、出入口を除き、周囲にある。)において、建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平坦で、敷地、隣地及び道路の相互間の高低差並びに門はなく、また、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁の指定等はないものとし、日影規制(日影による中高層の建築物の高さの限度)及び天空率は考慮しないものとする。なお、建築物は、すべての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

建築士試験高さ制限の塀

前回の記事の問題と少し違うので、ひと工夫が必要なんです。

ちょっと余談ですが・・・本当に余談ですが・・・この問題文を読んでると塀はあるんだけど、門はないんだぁ~。

せっかくの塀なのに防犯対策が出来てないなぁ~っとつっこんでしまったけど、これも試験独特なのかも知れませんね。

きっと門があると、問題文がもっと長くなるのでなくしてしまえっという事だと思いますが、この後に説明する条文は、門も塀も扱いは同じですので。

まずは、建築基準法の基本に戻りましょう

建築基準法上の「建築物」とは何か?

サクラ
サクラ
建築物ってあれよぉ~、建物のことでしょ♪
サク
サク
そうそう。そうなんだけど、建築基準法での建築物は少しプラスされるんだよ。

建築基準法第2条「用語の定義」

ではでは、建築基準法第2条「用語の定義」の中の第一号の「建築物」をチェックしてみましょう。

一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨(こ)線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

サクラ
サクラ
門や塀が建築物ってイメージつかないけど、建築基準法上では建築物って事かな?
サク
サク
そうそう、そんな感じでイメージを強く持ってね。

となると、門や塀があるだけで事情が少し変わっちゃうんです。

門や塀があると手間が増えちゃうんです

困ったことに、問題に手間が増えてその結果、正答率が下がってしまいます。

…って事は…逆に…。

理解して解けるようになると合格者と不合格者との差が開いて…グフッ。

二級建築士にやり

それは、前回の記事で書いた「後退距離」が関係してきます。

サクラ
サクラ
あっ!。門や塀が建築物だとすると、後退距離と言われているスキマのオマケがゼロになるんだぁ~!
サク
サク
サクラっ、すごいねぇ正解だよっ!。
サクラ
サクラ
やったぁ~♪

(まだ会話は続いていきます)

サクラ
サクラ
でもね、サク…実際には、門や塀が境界線ギリギリにあるお家はたくさんあるんだけど、そしたら実際には後退距離はゼロのお家ばかりになるん…だよね…?
サク
サク
そうそう。いいところに気がついたね。なのである条件に当てはまれば、門や塀はないものとしてみなして、後退距離が発生する条文があるんだよ。
サクラ
サクラ
それが今回言ってる”手間”ってことなんだね。
サク
サク
そうだよ。しかし今回のサクラは、冴えてるなぁ~♪

と言う訳でまずは後退距離が書いてある建築基準法第56条第2項をもう一度書いてみますね。

建築基準法第56条第2項

2 前面道路の境界線から後退した建築物に対する前項第一号の規定の適用については、同号中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは、「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。)に相当する距離だけ外側の線」とする。

今回の注目する部分を赤文字にしてみました。

これが、「門や塀など」が消えるかもよと言う建築基準法施行令第130条の12で定めている除外する条文なんです。

この「除外する条文」と言うのが、影響しますのでちょっと頭に入れれてくださいね。

建築基準法施行令第130条の12の内容

第130条の12 法第56条第2項及び第4項の政令で定める建築物の部分は、次に掲げるものとする。
一 物置その他これに類する用途に供する建築物の部分で次に掲げる要件に該当するもの
イ 軒の高さが2.3メートル以下で、かつ、床面積の合計が5㎡以内であること。
ロ 当該部分の水平投影の前面道路に面する長さを敷地の前面道路に接する部分の水平投影の長さで除した数値が1/5以下であること。
ハ 当該部分から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものが1メートル以上であること。
二 ポーチその他これに類する建築物の部分で、前号ロ及びハに掲げる要件に該当し、かつ、高さが5メートル以下であるもの
 道路に沿つて設けられる高さが2メートル以下の門又は塀(高さが1.2メートルを超えるものにあつては、当該1.2メートルを超える部分が網状その他これに類する形状であるものに限る。)
四 隣地境界線に沿つて設けられる門又は塀
五 歩廊、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分で、特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況を考慮して規則で定めたもの
六 前各号に掲げるもののほか、建築物の部分で高さが1.2メートル以下のもの
(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限の緩和)

本当は、この条文を全部説明したい気持ちはあるのですが、書き出すといつ道路斜線の本線に戻れるかわからないので、今回は門や塀にズームアップして説明しますね。

それより共通して大切なことは、条文の最初に「次に掲げるもの」とは、さっきちょっと頭に入れててねとお願いした「除外する条文」に繋がっていきます。

なので、繋げてもう一度まとめると「除外するものを説明するよ」っという事なので、ここに書かれているのは「建築物から消えちゃう条件」が書かれていると理解してください。

消えちゃう門や塀の条件

この条文の読んだままなのですが、文字で覚えちゃうよりイラストで覚えた方がわかりやすいので、少し書いてみました。

建築士試験における塀

条文をイラストにしてみるとこんな感じっ。

あっ♪、小学生の子供たちが塀からこちらをのぞいています。

このうちの誰かひとりは、ジャンプしているんですけどね(笑)。

では、今回の肝心の問題をもう一度ここに書いてみますね。

図のような敷地(補強コンクリートブロック造、高さ1.4mで、透かしのない塀が、出入口を除き、周囲にある。)において、建築物を新築する場合、建築基準法上、A点における地盤面からの建築物の高さの最高限度は、次のうちどれか。ただし、敷地は平坦で、敷地、隣地及び道路の相互間の高低差並びに門はなく、また、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁の指定等はないものとし、日影規制(日影による中高層の建築物の高さの限度)及び天空率は考慮しないものとする。なお、建築物は、すべての部分において、高さの最高限度まで建築されるものとする。

では、この塀をイラストにしてみますね。

建築士試験高さ制限の塀2

み、見えない・・・。(こどもたちの声)

つまりっ!

こういう事なんです。

小学生のこどもたちが敷地の中が見えるくらい解放感のある塀は消えちゃうことが出来ますよっという事です。

つまり、今回の二級建築士の問題は結果「消えない塀」となり、「後退距離はゼロ」ということになります。

あとは、前回解いてみた要領で解くと答えが出てきますという事で、解き方のプロセスはかなり省略しちゃって、北側道路斜線の(5+2+1)×1.25=10mが解答となります。

まとめ・・・ではない(苦笑)

だんだん長文になっているのは余計なことを書いているからだろうなぁ~。

そうそうっ、余計なことと言えばジャンプしている子どもが誰かって事をそのままだった。

正解は・・・。

こどもたち

次回は、道路斜線の話しもまだ補足したいとこありますが、一旦置いておいて「隣地斜線」のお話しになります。